読書の秋です Vol.4 山下清『ヨーロッパぶらりぶらり』

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山下清さんが好きです。

彼の点描画の素晴らしさには圧倒されてしまいます。
そして、彼の本にもまた、圧倒されてしまうのです。
『日本ぶらりぶらり』を初めて読んだときのあの感動。
芦屋雁之助さんが中の人をやっていたのだと知った時のあのやるせなさをスパーン!と跳ね返してくれるほどの大将がそこにいたのです。
「やっぱり大将は居たんだ!やっぱりあんた、大将だ!」と某PロミスのCMの勢いで叫びたくなりました。
そんな彼の紀行、ヨーロッパのものもあると聞いて探しており、半ば忘れかけていたころに内町工場さん(益子にあるとっても素敵なお店です。)で発見。もちろん即購入です。

『裸の大将』……その呼称に深く思いを巡らせたことはありませんでした。
ドラマの中で大将はいつもタンクトップに短パンという涼しげな格好で出演しており、「だ、だから裸の大将なんだな」と軽く流していた幼少時代。この本に出合うまでそのままの感覚でいたのですが、彼の文章を読むにつれ、そのあまりの正直さ・赤裸々っぷりに「おい!ほんとに裸じゃないか!!」と思わされたのです。

先生が、「外む省へいくと、君はなんのためにヨーロッパへいきたいのか、ときかれるが、お前はなんと答えるか」というので「絵をかくためと、めずらしいところを見物するのが目的です。そのほかになん百人のなかには、立ち小便をしたり、裸になったりする人間もいるかもしれないから、そんなのをみられたら面白いと思います。一番みたいのは、ヨーロッパのルンペンです」というと「あとの方はいわなくてもいい。はじめの方だけにしておけ」といわれたので、人間は正直にいっていい場合と悪い場合があるので、外む省では、半分だけ正直に答えて、あとの半分はだまっていることにした。とか。

ものすごく実際的で、論理的な御方なのだ、大将は。超リアリスト。そしてわからないことは極限まで自分で考える。『みにくいあひるのこ』のエンディングは本当にあれで幸せなのか?とか、人間は裸で歩いたらいけないのに石像や銅像は裸で、それをみんなが感心してみているのはなぜだろうとか、かなり時々ハッとさせられる。
読み進めながら、いいぞいいぞ!って思っている自分がいる。何より自由を求めていた大将。私だって自由を求めていたはずなのに、いつの間にかきちんと(でもないけど)枠の中に収まっている。だからあの正直な文章を読んでいると「いいぞ!そのままゆけー!」とエールを送らずにいられないのです。

読書は旅をすることに似ている、とはよく言われることですが、旅をするってそもそもどういうことなのか?
それは『日常にまみれて自分の立ち位置がわからなくなっている時、過去や異国・他人の人生などの非日常に飛び込み、自分が今いる場所やこれからの道をもう一度確認する作業』に他ならないのではないでしょうか。いつの間にか窮屈に、お行儀よくまとまった自分を発見し、さあどうしようか?と立ち返る作業。
流れない水は腐る、という諺があります。いつの間にか澱んでいた自分をまたさらさらと動かすにはどうすればいいか。大将のように旅に出られたらいいのかもしれないけれど、実際問題なかなか難しいですよね。
そんな時、そこから物理的に移動しなくても、何かが変わる、何かを変えるきっかけをくれる、それが読書だと思うのです。
これから寒くなって縮こまりそうな季節がやって来るけれど、精神は自由でありたいと改めて思った1冊でした。
合間に挟まれる彼の点描画は美しく、彼の状況描写もこれまたとても視覚的・映画的で素敵です。

余談ですが、友人が吉岡秀隆さんの大ファンでして、『Dr.コトー診療所』のドラマを観て「タンクトップと短パンとであんなにカッコいい人はいない」と言っていました。
いるよ…!いるじゃないか!!アルミカップぶらさげたリュックを背負ったら完璧だよ!!!
って言ったら怒られました。いや、でもほんとですってば。大将はめちゃくちゃカッコイイです。

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by g_yoyo | 2015-10-26 11:00 | つれづれ。 | Comments(0)

茨城県笠間にある陶芸ギャラリー曜燿のブログです。


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