読書の秋です Vol.3 藤枝静男『田紳有楽』

読書の秋3冊目はこちら。やきもの屋ですので、やきものの出てくる作品を選んでみました。

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藤枝静男の『田紳有楽』です。
イカモノ骨董商いをしている主人宅の池に沈められたイカモノ骨董品たちがしゃべりとおす不可思議な小説です。
志野筒形グイ呑みは金魚のC子と愛し合い、柿の蔕抹茶碗は時折人間に変身して主人にイカモノ商売を伝授し、丹波焼の鉢も飛び回る。
主人はというと実は弥勒の生まれ変わりとかで、次は焼き物にでもなりたいと思っている。
それぞれがないものねだりをしてそれぞれの救いを求めている。
有機物と無機物、動くものと動かないもの、偽物と本物…。その間を行ったり来たりして『なにか素晴らしい私』を追い求める。
でも最終的にはもうそんなのどうでもいいじゃないといったふうにどんちゃん騒ぎで「ペイーッ」とおひらきになる。

「鏡へ写せばお前の右手は左手になる。耳も左右逆になるぞ。それもお前だぞ。時を写せば過去現在は逆に流れるぞ。ブラックホールから吐き出された無がお前だぞ。ここに居るぞ。」

あっちがわもこっちがわもそんなものはただの線引きであり、『なにか素晴らしい私』を追い求めていようが今のその私もまぎれもなくどこまでも私でしかありえず、ただ線引きを持ち込もうとしていたに過ぎない。

頭が窮屈になったときに読むと笑った後になんだかちょっとだけほっとする、そんなお話でした。

※余談ですが、もうひとつの『空気頭』という作品は、食事時にはとても読めないかなり衝撃的なものでしたのでご注意を。逆に言えば食欲の秋にセーブをかけてくれもしたのだけど。

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by g_yoyo | 2015-10-19 11:00 | つれづれ。 | Comments(0)

茨城県笠間にある陶芸ギャラリー曜燿のブログです。


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